鎌倉の異界探訪 壱・・・十王岩

「鎌倉地図草紙」異界を歩く – P12-13

鎌倉の異界探訪 壱・・・十王岩

鎌倉には平安京と同じような都市の設計図があったと考えられる。市域の境界にあたる場所には異界標識としての十王像がおかれた。「十王岩」もそのひとつだった。

JR北鎌倉駅より徒歩約50分。天園ハイキングコースにある十王岩からの展望は、かながわの景勝50選に指定されている眺めの良い場所である。

展望台に立つと鎌倉の街や海が足元に広がり、由比ヶ浜までまっすぐに続く若宮大路を見ることができる。

若宮大路

若宮大路は真っ直ぐこちらに向かっており、延長戦はすぐ左下の足元に届くようだ。そこが若宮大路の起点である。

「鎌倉地図草紙」異界を歩く – P15

鎌倉の都市形成~十王岩と八幡宮

十王岩付近の岩塊から若宮大路の軸線上に直線を走らせると1380mの地点に東西大路上の鶴岡八幡宮社頭(神社の入口)と交わる。社頭は、「由比の浦」から伸びた若宮大路の終点である。

十王岩の役割

十王岩は船岡山と同じ役割を果たしていると考えられる。即ち、若宮大路の起点である。同時に大内裏の南北距離をそのままあてはめると八幡宮の社頭から1380m北にある北京極ともいえる。つまり都の起点と北辺の二つの役割を果たしていたということができよう。

十王岩までの八幡宮の北辺に境を画する塀や築地が無いことも一つの根拠といえる。十王が存在することはここから先が異界であることを示しているわけである。

十王岩 – 若宮大路の起点

「鎌倉地図草紙」異界を歩く – P63-65

天園ハイキングコースを西に向かって歩き、覚園寺方面に降りる分岐点を過ぎてしばらく行くと、左に手に向かって少し戻るかたちで道がある。この道を5分ほど登った右上方に、畳2畳ほどの岩が衛立のように立っている。その岩は「十王岩」と呼ばれ、鎌倉に面した側には三体の坐像らしきものが彫られていることがわかるが、風化がひどく、それらが何であるかはもはやわからない。江戸時代の地誌『鎌倉攬勝考(かまくららんしょうこう)』によれば、閻魔大王・如意輪観音・地蔵菩薩の三体で、「わめき十王」と呼ばれていいるという。「十王」の呼称は閻魔大王に由来するのだろう。岩の隣にある展望台に立って鎌倉市街地を見おろすと、若宮大路は短い一本の筋にしか見えないが、それは真っ直ぐこっちに向かっており、延長戦は立っている私たちのすぐ左下の足元に届くようだ。実際その延長線は、十王岩からほんの30~40mほど東の山腹を貫く。そこに、はるかに遠い若宮大路の起点がある。閻魔たちは異界との境界を示す標識としてここにいるのである。

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