鎌倉の異界探訪 壱・・・天台山・衣張山

「鎌倉地図草紙」異界を歩く – P15

 鎌倉の異界探訪 壱・・・天台山・衣張山

平安京は子午線(経線)が南北の基軸となっている。一方、鎌倉は地形的な制約から街づくりの基軸を別に設けたと考えられる。つまり、鎌倉の都は真北に向かって作られず、天台山と衣張山という二つの山を直線で結びその線を南北の基軸と位置付けたのである。

天台山は京の比叡山(別名天台山)に擬せられており、八幡宮の北の鬼門に当たる。更に南にある衣張山共々地蔵像や地蔵の地名が残っており、十王岩とは同義の場所であったといえる。

この二つの山の頂上を結ぶ直線と正確に平行しているのが若宮大路である。この二つの線と線の距離が1350~60m。これは大内裏の南北距離1380mを意識した可能性があろう。

天台山と衣張山を東の京極に模していたわけであり、基軸であるとともに境界として位置つけていたのであろう。いずれにせよこの機軸を元にして都市の中軸線である若宮大路がつくられ、前述したような都と十王岩との関係が形成されていくわけである。

山を基軸に使うという手法は、平安京の双ヶ丘が南北基軸の固定に用いられたように既にあり都市計画上必要な要素であったのだろう。

 

・天台山:標高141mの天台山は、鎌倉アルプスの一つとされ天園ハイキングコースにある。天台山の頂上には小さな石祠と三角点(地図を作成するために測量をする重要な基準点)があるだけで展望は開けていない。

・衣張山:標高121mの山頂からは鎌倉の街や海が一望できる。晴れた日には大島や三浦半島、富士山を見下ろすことができ絶景を楽しめる。映画「海街diary」で山頂から鎌倉の街を見下ろすシーンが撮影された場所。

衣張山ハイキングコースには、鎌倉時代の景観をしのばせる「名越の切通し(なごえきりどおし)」がある。