鎌倉の異界探訪 参・・・お猿畠の大切岸

「鎌倉地図草紙」異界を歩く – P48-49

鎌倉の異界探訪 参・・・お猿畠の大切岸

JR鎌倉駅から徒歩約45分。名越切通しの奥にある。800mにわたって屏風のように切り立った崖が連なり、崖に沿って散策路が整備されている。

切岸とは山肌を急角度に削り落とした人工の崖で、中世の山城など一般的にみられる防御施設である。お猿畠のそれは鎌倉旧市街を馬のひづめのように取り囲む山稜の東南部の山腹に作られている。

最近の調査により、お猿畠の大切岸は中世から近世にいたる何百年ものあいだ「鎌倉石」を切り出した跡であることが分かった。地肌の粗い脆うそうなこの石は、旧家の縁側の雨落ち溝・井戸枠・五輪塔・花壇のへりなど鎌倉の日常風景のいたるところで見かけられる。お猿畠の大切岸は防御のための重要な施設ではなかったが、鎌倉に数少ない地場産業をいまに伝える遺跡として大いなる価値があるといえよう。

【曼荼羅堂矢倉】